テレワークによるサテライトオフィス勤務とは?メリットや注意点
テレワーク推進が始まったことで、在宅勤務やサテライトオフィス勤務の選択肢が増えつつあります。この記事では、テレワークによるサテライトオフィス勤務についてのメリットや注意点についてご紹介します。
- 目次
- 1.テレワークとは?
- 2.サテライトオフィスとは?支社との違いや種類
- 3.テレワークでサテライトオフィスを活用するメリット
- 4.テレワークでサテライトオフィスを活用するデメリット
- 5.テレワークによるサテライトオフィス勤務の事例
- まとめ
1.テレワークとは?
テレワークとは、tele(遠く)work(働く)が組み合わさった言葉です。ICTを有効活用することで、時間や場所に囚われず柔軟に働くことのできる仕組みを指しています。また、近年ではコロナの影響など、職場への通勤を避けた働き方としても注目を集めているでしょう。
そんなテレワークですが、ひとことでテレワークと言っても働く場所によって3つの種類に分けられています。
- 1.自宅を利用したテレワーク(在宅勤務)
- 2.交通機関の移動中やカフェを使ったモバイルワーク
- 3.所属オフィス以外の施設に勤務するサテライトオフィス勤務
中でも、サテライトオフィス勤務は整った環境があらかじめ用意されている特長を持ちます。
1-1.テレワークによるサテライトオフィス勤務とは
在宅勤務には通勤時間を無くすメリットありますが、「自宅では逆に落ち着かない」「子供の育児に追われる」といった点に悩まされる人がいます。また、ネット環境をはじめセキュリティ面に配慮したVPN接続の導入や専用デバイス、必要であればシンクライアント環境など、企業側・社員側双方が環境を整えなければいけません。
一方で、テレワーク中にサテライトオフィスを活用すれば、従来の勤務形態に近いパフォーマンスを発揮しやすいとされています。
2.サテライトオフィスとは?支社との違いや種類
サテライトオフィスとは、企業本社から離れた位置に設置されている事業所を指します。サテライト(衛星)という言葉の通り、本社を中心に衛星のようにオフィスが点在していることが特徴です。
一見すると本社と支社のような関係で、「支社とサテライトオフィスの違いがわからない」という人も多いでしょう。
実のところ、支社とサテライトオフィスは違いを厳密に定義されている訳ではありません。しかし、実態を比べるとサテライトオフィスは小規模の事業所であり、支社とは少しばかり勝手が違います。
2-1.サテライトオフィスと支店・支社の違い
本社と支店・支社の関係性は明白です。本社から離れた地域の市場開拓や事業拡大を目的としており、本社の延長線上に位置しています。一方で、サテライトオフィスは従業員の働きやすさを重視している傾向にあります。
「テレワークで必要な機材が揃っていない」「在宅勤務は気持ちの切り替えができない」「落ち着いて作業できる環境がほしい」といったニーズを満たすため、利便性の向上を目的としてサテライトオフィスが設置されていることも多いです。
サテライトオフィスと支社の違いは厳密にはないものの、テレワーク向けとして設置された事業所がサテライトオフィスだと言えるでしょう。
2-2.サテライトオフィスの種類
サテライトオフィスには大きく分けて3つの種類が存在します。
○都市型サテライトオフィス
都市部に設立されたサテライトオフィスです。都市部ではテレワーク向けのシェアオフィスやコワーキングスペースが多いため、本社以外の役割を補う部署を目的として用意されることも多くなっています。
○郊外型サテライトオフィス
都市近辺の郊外に設立されたサテライトオフィスです。通勤時間の短縮や社員向けのオフィス機能開放など、テレワーク用途に設置されたサテライトオフィスも多くなっています。
○地方型サテライトオフィス
人口の少ない地方に設立されたサテライトオフィスです。少子高齢化対策として、地方創生を目的に各自治体の誘致で設置されることもあります。災害など万が一の緊急事態に対するリスクヘッジにもなるほか、採用に伴う人材層も広がるため、多様な働き方の1つとして注目されています。
中でも、テレワーク向けサテライトオフィスとして注目されているのが「郊外型サテライトオフィス」です。従業員の働きやすさ改善を目的として設置されていることも多く、在宅勤務に比べると、自己管理の苦手な人でも作業効率を安定させやすいメリットがあります。
2-3.サテライトオフィスの形態はそれぞれ
サテライトオフィスといえば、一昔前は地方創生のために本社から離れた地に設立されることが多くなっていました。しかし、近年ではテレワーク向けの環境としてサテライトオフィスを用意することもあり、従業員の働きやすさにフォーカスしつつも、サテライトオフィスとしての在り方が変わりつつあります。
大きく分けると「専用型サテライトオフィス」か「共有型サテライトオフィス」の2つになりますが、お互いにメリット・デメリットがあります。
○専用型サテライトオフィス
設立・維持コストが掛かってしまうものの、セキュリティ面を見ると自社員専用型のサテライトオフィスに利があがります。設備の統一がしやすく、本社と同レベルの作業環境を整えやすくなります。
○共有型サテライトオフィス
共有型のサテライトオフィスであれば設立・維持コストを比較的抑えることができます。ただし、シェアオフィスなどを他社員と共有する形になるため、機密性の高いプロジェクトにはあまり向いていません。
現在では、支社としての機能を内包した自社員専用サテライトオフィスや、レンタルオフィスを利用したテレワーク向けの一時的なサテライトオフィス。また、シェアオフィスをベースにした他社員と共有するサテライトオフィスなどさまざまな形態が存在しています。
3.テレワークでサテライトオフィスを活用するメリット
テレワークでのサテライトオフィス利用にはさまざまなメリットがあります。そのため、現在では企業側がテレワーク導入のためにサテライトオフィスを用意するといったケースも。
テレワークでサテライトオフィスを活用するメリットについて見ていきましょう。
3-1.時間を有効活用できる
サテライトオフィス勤務であれば時間を有効活用できるメリットがあります。在宅勤務によるテレワークのメリットとして通勤を無くすことがあげられますが、自宅の設備では作業能率が悪かったり、集中できなかったりと問題も浮かびがちです。
一方で、テレワークとして最寄りサテライトオフィスへの勤務を導入すれば、本社への出勤時間を短縮しつつ普段と変わらない作業効率を目指すことができます。
3-2.優秀な人材を確保しやすい
営業拠点となるサテライトオフィスを地方に建設すれば、地方で活躍している優秀な人材を確保しやすくなります。
また、育児や介護といった問題点から退職を考えたり、主要都市近辺に住んでいる社員の中には地方移住を考えていたりする人材もいるため、サテライトオフィスには人材流出を避けて雇用を継続しやすくなるといったメリットがあります。
3-3.BCP対策にもなる
BCP(事業継続計画)とは、万が一の災害が起きた時でも事業を継続するための計画のこと。大規模な自然災害などで都市部の機能が麻痺してしまうと、都市部にしかオフィスがない会社は機能不全に陥ってしまいます。
しかし、テレワークでも使えるサテライトオフィスが分散して用意されていれば、事業計画を止めること無く業務を継続することが可能です。BCP対策としてリスクヘッジを考えている場合は、サテライトオフィスの導入に大きなメリットがあると言えるでしょう。
3-4.ワークライフバランスの改善
勤務先と住まいが離れている社員にとって、サテライトオフィスによる通勤時間の削減は大きなメリットです。住居とオフィスの移動時間を最小限に抑えることで、ストレスの軽減や自由時間を増やすことができます。
また、通勤に掛かる交通費などをカットすることで、コストの削減を図ることもできます。テレワーク用のサテライトオフィスがあれば、社員の仕事に対する生産性やモチベーションの向上効果が期待できるでしょう。
3-5.社員同士のコミュニケーションが活発化する
サテライトオフィスへ勤務する形であれば、普通のテレワークよりも社員同士のコミュニケーションを促進することが可能です。在宅勤務やモバイルワークでは社員同士が直接顔をあわせないため、満足の行くコミュニケーションが取れないケースがあります。
とはいえ、サテライトオフィス勤務でも「顔をあわせるコミュニケーションがメインになる」という訳ではありません。テレワークの中ではサテライトオフィスのメリットとしてあげられますが、本社勤務と比較すると、ある意味でデメリットにもなります。
4.テレワークでサテライトオフィスを活用するデメリット
テレワークでサテライトオフィスを利用する面にはさまざまなメリットがありますが、一方でいくつかのデメリットが生じてしまいます。デメリット面について見ていきましょう。
4-1.人によってパフォーマンスを発揮できない
テレワークを始めとして、サテライトオフィス勤務では自己管理能力が弱い人の業務進捗具合に影響を与えてしまいます。
普段は上司や同僚の目から業務に意欲的であっても、サテライトオフィス勤務では従業員のサボりをなかなか感知しづらいのです。また、労働時間管理などいくつかの点で正しいパフォーマンスを発揮できなくなってしまいます。
テレワーク用にサテライトオフィスを設置する場合は、労働時間や進捗を管理できる環境整備や、自己管理能力についての意識を社員に共有する必要があります。
4-2.サテライトオフィスを設置するコストや労力
サテライトオフィスにはさまざまなメリットがありますが、実際に設置する場合は固定コストや設備への投資などいくつかのコストが必要になります。また、シンクライアントやVPNなど、環境によってはテレワークの仕組みを導入する環境整備・労力が必要です。
初期コストを抑えたい場合はコワーキングスペースやシェアオフィスを活用することで、サテライトオフィスに掛かるコストをある程度抑えることができます。
4-3.共有型サテライトオフィスでのセキュリティリスク
シェアオフィスなどをサテライトオフィスとして使う場合、セキュリティ面にいくつかの不安要素が残ってしまいます。社外の人間に画面を覗き見られてしまったり、社用端末の紛失・盗難被害にあってしまったりするかもしれません。
そのため、共有型サテライトオフィスでは情報漏えい対策を行なう必要があります。
5.テレワークによるサテライトオフィス勤務の事例
テレワークの導入にあわせて、サテライトオフィスを活用している事業所もあります。テレワークによるサテライトオフィス勤務の事例について見ていきましょう。
5-1.富士通
2017年にテレワークの勤務制度を導入した富士通。「出張で別事業所に行くときも仕事ができる場所がほしい」という社員の声を受けて、現在では東京本社をはじめとして、主要な事業所に社内サテライトオフィス「F3rd」を設置しています。
本社や事業所から離れた一般的なサテライトオフィスではなく、さまざまな場所に事業所がある富士通だからこそ、自社事業所内へのサテライトオフィス設置に踏み切ったとのこと。一部席にはシンクライアント端末が用意されているため、自身のアカウントでログインすれば普段と同じPC環境で作業することが可能です。
また、「リラックスのできる場にしたい」という考え方から、サテライトオフィスには休憩ができるスペースや飲食サービス、懸垂などの健康器具も設置されています。このような取り組みにより「サテライトオフィスをもっと増やしてほしい」という要望が多く、現在では社外のコワーキングスペースを活用したサテライトオフィス「F3rd+」も登場しています。
5-2.日立製作所
日立製作所の就業人員3万6,000人のうち、約7割の2万6,000人がテレワーク勤務の対象とテレワークの仕組みができあがっている日立。2017年には独自の部門別サーバー利用から離れ、「Office365」といったMicrosoft製品を利用する環境へと変化しています。
ワークスペースは日立のサテライトオフィス「BizTerrace」に加えて、株式会社ザイマックスの「ZXY Share」をテレワーク向けサテライトオフィスとして活用しています。現在では、日立グループ全体で月間5~6万人がサテライトオフィスを活用しているそうです。
5-3.りそな銀行
2019年7月頃、りそな銀行は長距離通勤者などが活用できるサテライトオフィスを開設しました。自宅近くの支店で仕事をしてもらうことで、育児や介護をしている社員のワークライフバランス改善を目的としています。
どのサテライトオフィスも新規開拓したのではなく、支店の事務削減や本部へ機能を集約したことで生まれたスペースを活用。サテライトオフィス利用者によると、普段は60分掛かる所属店への通勤が20分で終わることで、「業務に集中できるようになった」とコメントを残しています。
その後、りそな銀行は一部従業員を対象としてテレワーク利用者の範囲を広げ、参加者の多くは「作業効率が2割から3割ほど上がった」と体感しているそうです。
まとめ
サテライトオフィスは地方の優秀な人材を確保しやすくなるほか、従業員のワークライフバランスをはじめとしてさまざまなメリットがあります。テレワーク用のサテライトオフィスを用意すれば、在宅勤務で社員に掛ける通信費などの負担を減らすことが可能です。
とはいえ、はじめからサテライトオフィスの設立に取り掛かると大きなコストが掛かってしまうのも事実でしょう。まずはシェアオフィスなどを活用してコストを抑えつつ、社員からのレスポンスをもとにテレワーク環境の整備とサテライトオフィスの本格導入を考えてみてはいかがでしょうか。