【事例あり】オフィスで従業員の健康促進を図る方法とは?
「従業員には健康で長く働いてほしい」と感じている事業主や管理部門の方は多いでしょう。オフィスにおいて労働者の健康促進を図ることは、従業員本人だけでなく、経営状態の健全化にもつながります。自社で取り組めることから行動に移していきましょう。
この記事では、オフィスで従業員の健康促進を図る理由やメリット、オフィスで健康促進する方法を解説します。実践する際の考え方・ポイントも併せて確認し、従業員の健康状態の改善と経営状態の健全化を目指しましょう。
- 目次
- 1.オフィスで従業員の健康促進を図るべき理由
- 2.オフィスで従業員の健康を促進するメリット
- 3.事例から学ぶ!オフィスで健康促進する方法
- 4.オフィスで健康促進するポイントは「7つの行動」
- まとめ
1.オフィスで従業員の健康促進を図るべき理由
日本では少子高齢化が進んでおり、生産年齢人口は1995年を境に減少し続けているため、働き手の確保が難しくなっています。今後は、経営の発展や仕事のパフォーマンス向上のためにも、オフィスにおける従業員の健康促進が重要なポイントとなるでしょう。
ここでは、オフィスで従業員の健康促進を図るべき理由について具体的に解説します。明確な目的をもって行動できるよう、まずは従業員の健康が第一とされる理由を確認しましょう。
1-1.プレゼンティーズムによる損失が大きい
世界保健機関(WHO)では、健康問題が理由で低下したパフォーマンスの損失を示す指標として、「プレゼンティーズム」と「アブセンティーズム」を提唱しています。
プレゼンティーズム | 出勤はできるが、健康問題に起因する症状によって生産性が下がっている状態 |
---|---|
アブセンティーズム | 健康問題によって仕事を欠勤している状態 |
プレゼンティーズムは、一見すると医療費などのコストがかかっていないように見えますが、生産性の低下によって間接的に健康関連のコストが生じます。
従業員が健康問題を抱えながらオフィスで働いている場合、業務生産性の低下というプレゼンティーズムによる損失が大きくなる恐れがあります。健康問題による損失を抑えるためには、オフィスでの健康増進は重要だといえるでしょう。
1-2.健康経営の考え方が注目されている
健康経営とは「従業員の健康を促進する取り組みは自社の収益性を高める投資である」という考え方に基づいて従業員の健康管理を行う経営手法です。健康経営の考え方は、「企業の成長と存続に必要な投資」ともいわれており、近年注目を集めています。
従業員が健康な状態を維持できていれば、働く意欲をキープしやすく、仕事のパフォーマンスも高まります。従業員が健康であることは、企業の生産性向上や売上アップにつながるでしょう。
2.オフィスで従業員の健康を促進するメリット
オフィスにおいて従業員の健康促進を図ることには、以下の4つのメリットが期待できます。
●プレゼンティーズムの解消
出勤していても、健康問題によってパフォーマンスが低下すると、企業全体の生産性が低下します。従業員の健康促進に取り組むことで、このようなプレゼンティーズムを解消できるでしょう。
●アブセンティーズムの解消
従業員の健康促進に取り組むことで、病気やケガを未然に防ぐことができれば、退職者・休職者の増加や欠勤率の上昇を抑えることができます。欠勤・休職・退職によって生じる損失の減少にもつながるでしょう。
●企業イメージの向上・企業全体の活性化
心身ともに健康な従業員が多い組織は、社外から見ても明るく活発な印象となります。従業員の健康促進によって企業全体が活性化すれば、企業イメージが向上するでしょう。
●健康保険料の削減
企業が健康増進に取り組むことで従業員の病気やケガが減少すれば、医療費の減少も期待できます。医療費が減ることによって、健康保険料の増加を緩やかにすることが可能です。
従業員の健康増進に取り組むメリットには、上記のような多数のメリットがあります。メリットを理解した上で、従業員の健康を維持・向上させる取り組みを行いましょう。
3.事例から学ぶ!オフィスで健康促進する方法
オフィスで従業員の健康増進に取り組むことにはさまざまなメリットがありますが、健康を促進するためにはどのような方法が有効なのでしょうか。
ここからは、健康経営に取り組んでいる企業が実践している方法について紹介します。具体的な事例を確認し、自社で取り組む際の参考にしてください。
3-1.体を動かす機会を創出して運動不足を解消する
体を動かす機会を作ることは、健康経営を意識している企業の中でも人気の高い方法です。具体的な2つの事例をチェックしてみましょう。
●ボルダリングウォールの設置
アマゾンジャパン株式会社では、オフィス内に従業員が利用できるボルダリングウォールを設置しています。休憩時間などに積極的に運動できる点がポイントです。
●スタンディングワークの実施
株式会社フジクラでは、長時間座りっぱなしになることを防ぐために「従業員のデスクを昇降型デスクにする」などの工夫を行っています。立ち仕事を増やすスタンディングワークは、比較的簡単に取り入れられるため、実践できるポイントから改革してみましょう。
3-2.栄養バランスの整った食事で食生活を改善する
栄養バランスが整った食事をとることも、健康の維持・向上には欠かせません。オフィスではどのような方法で食生活改善に向けた取り組みができるのでしょうか。
●社内で育てた野菜の食べ放題
株式会社パソナグループでは、社員食堂(従業員食堂)において、社内で育てた野菜を食べ放題で提供しています。昼食・夕食ともに実施しており、食生活が偏りやすい従業員の食事改善につながっています。
●社員食堂における健康メニューの提供
アマゾンジャパン株式会社では、社員食堂で栄養価が高い食事を適量摂取することができます。毎月1回の野菜販売もあり、プライベートでの食生活改善も福利厚生でサポートしている点がポイントです。
3-3.快適性を感じる空間を作りストレスを緩和する
ストレスは、心身の健康問題の原因となる恐れがあります。快適に過ごせる空間を作り、従業員がストレスを感じにくいオフィスを実現しましょう。
●デスクスペースを広くする
SCSK株式会社では、社屋移転を機に従業員が利用するデスクの幅を1.5倍に広げました。負担の少ない自然な姿勢で仕事ができることで、従業員の快適性や満足度が高まり、デスクワークでの作業効率が向上しています。
●従業員によるオフィスの飾り付け
沖縄教育出版株式会社では、情報を共有するための掲示や季節の飾り付け、オフィス内の緑化など、従業員の社内向け活動をサポートしています。従業員が過ごしやすい空間を作れる上に、自分で考えて工夫することで意識が向上するというメリットもあります。
4.オフィスで健康促進するポイントは「7つの行動」
自社で従業員の健康課題解決に向けた取り組みを実践する際は、「7つの行動」を誘発する仕組み作りが重要です。
■オフィスで健康を促進する7つの行動
【1】快適性を感じる
従業員が快適に過ごせるオフィスを作ることは、心身の不調を未然に防ぐことにつながります。
【2】体を動かす
仕事の合間に運動することが習慣になる場所を作ることで、運動器・感覚器障害・生活習慣病の予防や改善を図れます。
【3】適切な食行動をとる
適切な食習慣も健康的な生活には重要です。従業員が健康的に過ごせるような食生活を支援し、生活習慣病の予防・改善につなげましょう。
【4】清潔にする
オフィスの環境を清潔に保つことで、アレルギーの発症や感染症拡大のリスクを低減できます。
【5】休憩・気分転換する
昼寝などの休憩や気分転換・リラックスできる空間、規則を導入することで、ストレス解消やメンタルヘルスの不調を未然に防ぐ効果が期待できます。
【6】コミュニケーションする
従業員同士の交流も、心身を健康に保つために重要な要素です。明るく積極的にコミュニケーションできる職場環境を作りましょう。
【7】健康意識を高める
健康情報の掲示やストレスチェック・メンタルヘルスチェックの実施、アプリを活用したウォーキングイベントの開催など、従業員の健康に対する意識改革を行いましょう。
健康促進につながるオフィス環境整備で困ったときには、「7つの行動」をひとつの指針とする方法がおすすめです。自社に合う健康促進の方法を考案・実施し、従業員の健康維持・向上と経営の健全化につなげましょう。
まとめ
従業員の健康促進を図ることは、従業員側の生活の質を向上させるだけでなく、経営損失の予防や労働生産性の向上といった企業側の利益にもつながります。健康経営に力を入れている企業も多いため、実際の事例を参考にしながら自社に合う健康促進の方法を考えましょう。
健康促進につながるオフィスの整備で困ったときには、「7つの行動」をひとつの判断基準とすることをおすすめします。自社に適した取り組みを行い、従業員自身の健康増進と企業経営の健全化・活性化を図りましょう。