バイオフィリックデザインとは?音のプロにオフィスへの効果的な導入方法を聞いてみた!エムズシステム三浦社長インタビュー【2】
バイオフィリアやバイオフィリックデザインという言葉を聞いたことはあるでしょうか。企業が働き方改革などの流れを受けてオフィス環境の快適性を追求する動きが活性化している中で、このバイオフィリアの概念やバイオフィリックデザインは注目が高まっている分野です。
ここではバイオフィリアやバイオフィリックデザインに関してや、「音」の大切さについてエムズシステムの三浦社長にお話をお伺いしてきました。インタビュアーはオフィスコム株式会社 商品企画部 本部長の那波です。
1.バイオフィリア・バイオフィリックデザインとは
Q. 那波 バイオフィリアとは何ですか?
三浦 バイオフィリアとは、「人間は本能的に自然とのつながりを求めている」という概念を指す言葉と言われています。この概念をもとにオフィス環境を整えることで、社員が快適に作業ができる環境が整えられると考えられています。具体的な効果としては、「幸福度の向上」「生産性の向上」「創造性の向上」の3つが期待できると言われています。
これは要するに五感で自然が感じられるような環境を実現していきましょう、ということになります。オフィス環境の場合は、五感のうち味覚で自然を感じる機会は得られにくいので、考えるべきは触覚・聴覚・視覚・嗅覚ですね。このうち嗅覚も人によっての好みが大きく分かれるので、まずオフィス環境でバイオフィリアの概念を取り入れやすいのは触覚・聴覚・視覚ということになるでしょう。
Q. 那波 バイオフィリックデザインとは何ですか?
三浦 空間デザインの手法のひとつでバイオフィリックデザインというものがあります。これは、特定の空間をバイオフィリアの概念に基づいてインテリアや照明、音やにおいも含めて空間を作り上げる要素全てをデザインするという手法です。
Q. 那波 空間全体を自然環境に近づける、ということですか?
三浦 はい、ただ実際にバイオフィリックデザインを取り入れる場合は、目に見えるものから取り入れることが多いのが実情ではあります。観葉植物を配置したり、自然光に近い照明を設置するといった例がわかりやすいでしょう。においはバイオフィリアの説明でもお話ししましたが、日本人は無臭を好む人が多いこともありなかなか取り入れるのは難しい側面もあります。音は現状は空間デザイン(バイオフィリックデザイン)の観点ではなかなか議題に上がらない状況ですが、環境作りには大切な要素です。
2.バイオフィリックデザインを音で取り入れる方法
Q. 那波 バイオフィリックデザインを音で取り入れる方法について詳しく教えてください
三浦 まずは空間に自然音を流すことですね。この自然音というのには2種類の意味がありまして、「自然の音」と「自然な音」両方の意味での自然音を流せるとよいと思います。
まず「自然の音」というのは自然界で発生している音のことですね。例えば川のせせらぎとか、森の音などです。こういうゆらぎのある音はバイオフィリアの概念からオフィス環境に良い影響を与えると考えられています。ただ、そういった「自然の音」もただ流せばいい、というわけではなくあくまでも「自然な音」として空間に馴染むことが大切になってきます。
Q. 那波 自然界の音をスピーカーで単純に流すだけでは不十分ということになりますか?
三浦 そうですね。自然の音を指向性の強いスピーカーや音質で流してしまうと、それはもう人工的な音になってしまいますのでバイオフィリックデザインとしては不十分ということになります。この「自然の音」を聞いた人が人工的な音ではなく限りなく「自然な音」として受け取れるかが大切です。
Q. 那波 自然界の音ではなく自然な音の出方が重要ということですか?
三浦 はい、自然界の音であることはバイオフィリックデザインの観点としては大切な要素なのですが、それを「自然な音」としてオフィス環境に馴染むことが大切です。この「自然の音」と「自然な音」の違いは実は以前から理解はできていたものの、なかなか「自然な音」を実現できる機材が存在しなかった、という現実がありました。なので、バイオフィリックデザインで音を取り入れる場合でも「今、手に入る音響機材で妥協していた」ということもあると思います。
Q. 那波 自然な音を流せる音響機材は現状は存在しない、ということでしょうか?
三浦 実はこの「自然な音」を可能にするよう取り組み続けていたのがエムズシステムでして、私たちのスピーカーの一番の特徴でもあります。エムズシステムのスピーカーであれば、心とからだに対して「自然な音」を実現できます。
食材などは昨今オーガニックなものが好まれる風潮になってきていますが、音に関してもできる限り自然な音が好まれる時代がきていると感じます。私たちは人工甘味料や着色料の入っているインパクトのある味ではなく、あくまでも自然な味というオーガニック食材が好まれているこの風潮を、音の世界でも同じように取り入れていければと考えています。
3.オフィスに音のバイオフィリックデザインを取り入れるメリットと注意点
Q. 那波 オフィスに音のバイオフィリックデザインを取り入れるメリットを教えてください
三浦 バイオフィリックデザインの効果としては、幸福度・生産性・創造性の向上などがありますね。ただバイオフィリックデザインは空間全体をデザインすることで成り立つものですので、音単体でのメリットはなかなか難しい部分ではあるのですが、観葉植物などを置くといった空間全体のデザインを行う場合はともに音のデザインが重要な役割を担います。
Q. 那波 音の役割とはどのようなものになりますか?
三浦 人は五感で空間の状況を把握するものですから、観葉植物を設置して視覚的に自然を認識したとしても風の感じや音が伴わないと自然の中にいる時と同じようなリラックス効果はなかなか得られません。なので、バイオフィリックデザインの効果を最大限に発揮するには、音も併せてデザインすることが重要だと考えています。
また、音をオフィスに取り入れることで副次的な効果も得られます。BGMとしての効果が発揮されますので、無音の状態よりも集中力やクリエイティビティの向上が期待できるでしょう。また、電話やエアコンの音などオフィスで発生する刺激音を包み込むことでノイズマスキング(エア・コンディション)できるので、ピリピリとした緊張感の緩和にも効果を発揮します。
まとめ
バイオフィリックデザインはオフィス環境を設計する際に取り入れると、社員の生産性や幸福度などに良い効果をもたらすとされている空間デザインの手法です。バイオフィリックデザインを取り入れる際には視覚的な要素だけでなく、音も併せて取り入れることでより効果的な空間にできるでしょう。
プロフィール
インタビュー回答者
有限会社エムズシステム
代表取締役
三浦 光仁
20年勤めた百貨店のバイヤーから、NGO活動レインフォレストジャパンに参画。2000年にエムズシステムを設立。2003年にエムズシステムスピーカーMS1001を発表。以来、世界中の人々の暮らしの空間を『音』によってより豊かに整えて行くことを目指す。
インタビュアー
オフィスコム株式会社
商品企画部 本部長
那波 伸晃
オフィス家具業界歴13年、オフィスコム創業期のメンバー。数々のヒット商品を生み出し、ユーザー目線での商品開発を得意としている。