ペーパーレス化のメリットは?事例から学ぶペーパーレス化の進め方
近年ではプラスチックの過剰包装を取りやめたり、レジ袋を有料化したりと環境に配慮した取り組みが増えつつあります。また、電子書籍を始めとしたペーパーレス化のメリットを見出し、ペーパーレス化の取り組みを始めようとする方もいるかもしれません。
この記事では、ペーパーレス化とは何か、メリットやデメリットについて解説した上で、成功事例を元にペーパーレス化に取り組む方法をご紹介します。
1.ペーパーレス化とは?
ペーパーレス化とは名の通り、紙の使用量を減らすことを意味します。今まで紙に印刷して管理をしていたデータを電子化ファイルとして保存したり、会議資料をパソコンやタブレット上で共有したり。Web会議をはじめとしたさまざまな業務を電子化することで、ペーパーレスに取り組む企業もいます。
端的に言えばペーパーレス化とは、紙の利用を減らした分、データを電子化ファイルとして管理することだと言えるでしょう。
1-1.ペーパーレス化は国が推進している
ペーパーレス化にはさまざまなメリットがあります。コスト削減や業務効率の改善といったメリットのほか、紙の原料となる森林の保護、ひいては地球全体の環境保護にも繋がるとされています。
そのため、ペーパーレス化を日本全体に浸透させるべく、2016年には契約書や領収書の電子保存が可能に、2017年にはスマホカメラでの写真をデータとして保存することが認められました。
さらに、2019年に施行された働き方改革にもペーパーレス化が具体策として盛り込まれています。現在では一部を除いた契約書や領収書といった資料を、すべて電子文書として保存することが可能です。
国が推進するペーパーレス化にはさまざまなメリットが有るため、ゆくゆくはペーパーレスによる電子データ上の契約が主流になっていくでしょう。
1-2.ペーパーレス化の現状
「ペーパーレス化にはさまざまなメリットが有るため今後は主流になっていく」とはいうものの、実際にはペーパーレス化に取り組んでいない企業もあります。
ペーパーレスの現状として、クラウドサービスを提供するペーパーロジック株式会社が「東京に本社を構える役員111名」を対象に行なったペーパーレス化のアンケート調査を見てみましょう。
Q.ペーパーレス化を進めるシステムはどの程度導入されていますか?(複数回答)
勤怠管理システム:60.4%
電子ワークフロー(稟議書・申請書など):56.8%
経費精算システム:46.8%
見積書・請求書発行システム:45.0%
電子契約(一部導入を含む):28.8%
その他の電子ツール:27.0%
導入していない(全て紙で行っている):10.8%
答えられない:4.5%
わからない:4.5%
出典:「ペーパーレスに伴う2020年度予算に関するアンケート調査プレスリリース(2020年1月7日)」ペーパーロジック株式会社
上記回答のうち、すでにペーパーレス化に取り組んでいる企業の8割以上は「今後もペーパーレス化を推進していく」と回答しています。ペーパーレス化の現状を見ると、一切取り組みをしていない企業は全体の1割程度に収まっており、多くの企業が何らかの形でペーパーレス化に取り組んでいることがわかります。
とはいえ、「すべての書類をペーパーレス化できる」という訳ではありません。ペーパーレス化の現状としては、メリットを理解しつつも、各書類をすべて電子データ化できない点がネックになっていると言えるでしょう。
2.ペーパーレス化のメリット・デメリット
ペーパーレス化には環境配慮をはじめとしたさまざまなメリットがあります。しかし、ペーパーレス化にデメリットがあるのも事実でしょう。
ペーパーレス化のメリット・デメリットについてご紹介します。
2-1.ペーパーレス化のメリット:データの検索が楽&業務効率の改善
ペーパーレス化の大きなメリットの1つが「データ検索が楽になる」という点です。紙で保管された資料を探すには、保管場所からファイルを取り出して、目的の資料を手探りで探す必要があります。また、取り出したファイルは適宜適切な位置へ戻すなどいくつかの手間がかかるでしょう。
一方で、ペーパーレス化を取り入れれば資料検索がやりやすくなるメリットがあります。データ管理を明確化することで、検索機能を使えば目当ての資料を簡単に引き出すことが可能です。
取引先とのやり取りで紙に印刷、郵送といった流れも電子データ上で行えるようになれば、業務効率もアップしやすくなります。また、会議資料にミスがあってもデータ上で修正すればすぐに修正稿を共有できるため、修正から印刷、再配布といった時間もかかりません。
2-2.ペーパーレス化のメリット:さまざまなリスクヘッジができる
従来のデータ資料では、紙やインクの経年劣化により資料が見づらくなってしまったり、火災や災害といった被害により書類自体を失ってしまう場合があります。ペーパーレス化を取り入れれば、データをクラウド上に保存できるため、万が一資料を紛失しても復元することが可能です。
また、紙の資料とは違いサーバー上でデータの管理制限を設けられるため、簡単に社員ごとに閲覧制限を変えられるのもペーパーレス化のメリットでしょう。
2-3.ペーパーレス化のメリット:紙代・印刷代のコストカットの成功
ペーパーレス化のメリットとして欠かせないのが、紙にかかるコストをカットできるという点です。印刷紙だけでなく、印刷機器や取引先へ資料を直接郵送する費用、使用済み資料の廃棄費用などさまざまな”紙に必要なコスト”を削減することができます。
2-4.ペーパーレス化のメリット:保管スペースの開放
書類の中には数年ほど保管しなければならない資料もあります。しかし、会社が大きくなればなるほど紙の書類を保管するスペースが必要になるのも事実です。一方で、ペーパーレス化に成功すれば紙の資料を保管するスペースやコストをカットすることができます。
倉庫やオフィスを有意義に活用できるようになるのも、ペーパーレス化のメリットだと言えるでしょう。
2-5.ペーパーレス化のデメリット:従来とは違ったオペレーションが必要
ペーパーレス化のデメリットであげられるのが、従来とは違ったオペレーションによる抵抗感です。長く務めている社員ほど仕事のやり方を変えられるのに抵抗があり、IT機器に不慣れな社員がいるのもペーパーレス化が進まない原因の1つともなっています。
ペーパーレス化のメリットを正しく得るには、ITに不慣れな社員でも扱いやすいシステムやデバイス、オペレーションを用意する必要があります。
2-6.ペーパーレス化のデメリット:相手によっては対応してもらえない
勤怠管理や経費管理は自社内のペーパーレス化で自己完結することができますが、契約書などは未だに紙の資料で行なう企業も多くあります。そのため、自社がペーパーレス化に対応していても、取引先との都合によっては紙での取引が必要になるケースがあります。
2-7.ペーパーレス化のデメリット:すべての書類が電子化できる訳ではない
現在では法律上、ほとんどの契約書をペーパーレス化することができます。しかし、定期借家契約などごく一部の書類はペーパーレス化することができず、未だに紙の資料で保管しなければいけません。(2020年11月時点)
今後はさらなるペーパーレス化を目指し、法整備が行われていく見込みとなっていますが、現状すべての資料を電子データ化して良いという訳でもありませんので注意しましょう。
3.ペーパーレス化の成功事例とは
ペーパーレス化には多くのメリットがあるため、自社でもぜひ取り入れたいという考えを持っている方もいるかもしれません。ペーパーレス化のメリットをチェックする上で、ペーパーレス化を取り入れて実際に成功した事例についてご紹介します。
3-1.愛媛県西予市
総務省が行った「ICTを活用したペーパーレス化から働き方改革への取組み」では愛媛県西予市が地方創生プロジェクトとして選ばれました。ペーパーレス化の導入に約4,000万円のコストが掛かったとされていますが、ペーパーレス化の成功事例としても注目されています。
フリーアドレス&ペーパーレス化に取り組んだことにより得られた効果は以下のとおりです。
- フロア全体の会話量が2.2倍に増加
- 議会でのコピー使用量が半減、FAX代は1/10以下までコストカット
- 7割以上が業務効率が改善したと体感
- 情報の電子化で月に一人あたり3.2時間の効率アップ
- 効率化による削減効果は年換算で1,600万円相当
ペーパーレス化のメリットとしてあげられる業務効率の改善に加えて、年換算で1,600万円相当の削減効果があったのは見逃せません。ペーパーレス化の導入は機器整備に約2,900万、フロアの整備に約1,100万掛かったとされていますが、数年で十分回収できることがわかります。
3-2.長野県長野市
長野市ではICTを活用したペーパーレス化の導入が進められました。平成21年時点から紙の会議資料を利用せず、極力パソコンやタブレットを活用したデータ共有を実践。その後、徐々に資料印刷や配布といった工程を削減していき、最終的にはペーパーレス化で目標としていた数値を超え、14万枚もの紙資料を削減することに成功しました。
ペーパーレス化のメリットとしてもあげられる会議資料のコストカットですが、カラーコピー1枚あたり30円換算だと、印刷費用を420万円ほど削減することに成功した計算です。
また、会議にかかる準備時間も約6分の1まで改善されており、業務効率がアップしたことが伺えます。
4.ペーパレス化を自社で取り入れる方法
ペーパーレス化を自社で推進するには、いくつかの手順が必要です。それぞれの段階に分けてペーパーレス化を取り入れる方法について見ていきましょう。
4-1.ペーパーレス化のメリットを知ってもらう
まずはじめに、上層部の人間にペーパーレス化のメリットについて理解してもらう必要があります。また、従来のオペレーションで作業してきた社員の中にはペーパーレス化に強い抵抗感を抱く方もいるため、会社の方針としてペーパーレス化のメリットを全社員に認識してもらうことが大切です。
4-2.少しずつペーパーレス化を取り入れる
すべてを一気にペーパーレス化するのではなく、できる範囲内でペーパーレス化に取り組んで見るのもポイントです。部署やプロジェクトごとなど、限定的な範囲に限って実験を行なうのもペーパーレス化を取り入れる方法だと言えます。
また、紙の資料として残っている中からいくつかのデータをPDFファイルとしてクラウドサーバーに保存し、この機会に紙の資料を断捨離してみるのも良いでしょう。
4-3.ペーパーレス化を進めるツールを導入する
ペーパーレス化を導入するには、「パソコンやタブレットなどの電子機器」「クラウドサーバー」「ペーパーレス向けシステム」の利用が不可欠です。タブレット型の端末であれば、比較的直感的に操作できるためIT機器に抵抗のある方でも触れやすいメリットがあります。
また、電子データを保存する上でクラウドサーバーの準備は欠かせません。現在ではさまざまなクラウドストレージを提供するサービスもあるため、そちらを利用するのもペーパーレス化推進の手だとも言えます。
そして最後に、ペーパーレス向けのシステムを導入することが要となります。たとえば、経理部でペーパーレス化した経費精算システムを利用し、「社員から領収書をスマホカメラで送ってもらい、電子データで管理する」というのも近年見られる仕組みの1つです。
もちろん、ペーパーレス向けシステムは利用せずに、「紙の資料を読み取って電子データで保存する」「会議資料はパソコンを使って電子データ上で共有する」といった方法も立派なペーパーレスだと言えるでしょう。
4-4.ペーパーレス化の代行サービスを利用するのも手
現在ではペーパーレス化の代行サービスも存在します。既存資料のファイル分けが大変だったり、「ペーパーレス化のメリットが気になるけどなかなか手が出せない」といった方は、ペーパーレス化の代行サービスに依頼してみることをおすすめします。
まとめ
今後ますますペーパーレス化は進んでいくと予想されます。法整備も整いつつあり、多くの企業がペーパーレス化に取り組んでいる現状を省みると、ペーパーレス化に取り組んでいないのは企業としてデメリットになってしまうかもしれません。
情報化社会においてペーパーレス化のメリットは多いため、ペーパーレス化に魅力を感じる方は、今一度ペーパーレス化のメリットをもとにペーパーレス化システムを導入してみてはいかがでしょうか。