オフィスの廊下・通路を考える上では消防法・建築基準法の遵守が必須
オフィスレイアウトは、企業イメージを左右する重要な要素です。近年はベンチャー企業を中心に個性的なデザインが増えており、新卒採用の応募理由の1つとして「おしゃれなオフィスで働きたい」と希望する若者の注目を集めています。
しかし、どのようなデザインでも採用できるとは限りません。特に、廊下や通路は消防法・建築基準法に基づき、安全性に問題のない範囲でデザインすることが必要です。
この記事では、オフィスの廊下や通路をデザインするときに遵守すべき、消防法や建築基準法について解説します。オフィスレイアウトに悩む企業の総務担当者は参考にしてください。
1.オフィスの廊下には幅の確保が必要
個性的で魅力あふれるオフィス空間は、働く従業員のモチベーションに良い影響を与えます。少しでも働きやすい環境を整えるために、オシャレさを重視したレイアウトを考えるケースもあるでしょう。
ただし、廊下や通路の幅など、法律で一定の基準が設けられている部分もある点に注意しなければなりません。快適に業務へ取り掛かることができる幅はもちろん、廊下や通路は非常時の避難経路となるため、安全に避難できる幅を確保することが求められます。
具体的な幅の目安は、最低限、人ひとりがスムーズに通ることのできる広さです。ただし、主要な通路や廊下は多くの従業員が快適に利用できるよう、人と人が余裕をもってすれ違える幅をおすすめします。
人の肩幅が45cm前後であることを考えると、余裕を設けた下記の幅が目安となります。
- 多少狭くても構わない通路(人ひとり余裕で通れる程度)…60cm前後
- 主要な通路や廊下(人と人がすれ違える程度)…1.2m前後
どちらも、成人男性の体格を想定してデザインに反映させることがポイントです。
主要となる通路や廊下の他にも、オフィス内にはさまざまな通路が存在します。効率良く安全に業務を行うためには、下記の通路幅も考慮しましょう。
- デスクとデスクの間
- デスク後ろの通路との間
- デスクと壁との間
- オフィス家具やコピー機などの周辺
上長の背後をなるべく通らないようにする場合は、あえて幅を狭くする方法も良いでしょう。ただし、前述したように人ひとりが余裕で通ることのできる幅は確保すべきです。
2.建築基準法が定めるオフィスの廊下幅
オフィスデザインで注意すべき制限の1つが、建築基準法です。建物の最低基準を定めた法律で、廊下に関する基準も「建築基準法施行令第119条」に明記されています。
119条では大きく分けて学校用の基準とその他の基準の2種類があり、オフィスの廊下に適用される条件は以下の通りです。
病院における患者用のもの、共同住宅の住戸若しくは住室の床面積の合計が100平方メートルを超える階における共用のもの又は三室以下の専用のものを除き居室の床面積の合計が200㎡(地階にあっては、100㎡)を超える階におけるもの 両側に居室がある廊下における場合 1.6m以上 その他の廊下における場合 1.2m以上
たとえば、シェアオフィスのように廊下の両側に部屋がある(中央に廊下がある)場合は、両側のドアが開いても問題なく通ることのできる幅1.6m以上が必要です。片側が窓や壁となっている場合は条件が緩和されるため、人と人がすれ違える程度の幅1.2mを確保できれば違反になりません。
幅を計測するときも、下記の2点に注意する必要があります。
- 廊下の幅は内法で計測する
- 柱など突起物がある場合は最も狭いところを計測する
廊下の幅は内法で計測することが基本です。内法とは建物の内側を計測する方法で、壁の内側から反対側にある壁の内側までの幅を計ります。外側の壁までの距離は含まれないため、壁を厚めに作って幅を確保することはできません。
また、柱など廊下の途中に出っ張った部分が存在する場合は、廊下で最も狭い部分の幅を参考とします。柱など厚みのあるものを廊下のデザインに組み込むときは、幅を圧迫しすぎない厚さに留めましょう。
3.消防法が定めるオフィスの廊下に関する規定
建築基準法とともに遵守しなければならない制限が、消防法に基づく内容です。一見すると火気のないように思えるオフィスも、電子機器やコンセントのショートなど突然のトラブルで火災が発生することがあります。
万が一のときに迅速な避難行動がとれるよう、消防法によって定められた条件を守らなくてはなりません。
ここでは、消防法の規定で意識すべき点を解説します。
3-1.避難経路の確保が必要
幅や計測方法が明確に定められている建築基準法に対し、消防法では通路幅に具体的な規定が存在しません。消防法で明確な基準が設けられているものは、百貨店など物販店に対してです。
もともと建築基準法で1.2~1.6mの基準が設けられているため、遵守していれば廊下の幅で問題を指摘されることはありません。しかし、極端に狭い通路を設置して良いわけではなく、避難経路の確保が要請されています。
オフィスビルや商業ビルの火災で度々取り上げられる問題が、廊下や非常口付近が備品で塞がれていた事例です。オフィスの場合も避難経路を確保するために、必要以上の荷物や機器を置いてスペースを狭めることがないよう注意しましょう。
3-2.廊下以外でも規定を守ることが大切
廊下や通路の幅以外にも、非常時のための備えとなる規定は数多く挙げられます。災害の被害を大きくしないためにも、消防法は必ず守りましょう。
消防法では、消火設備・警報設備・避難設備・消防活動用設備の設置が義務付けられています。それぞれの具体的なアイテムは下記の通りです。
設備の種類 | 具体例(一部) |
---|---|
消火設備 | 水バケツ・スプリンクラー・屋内消火栓設備など |
警報設備 | ガス漏れ火災警報設備・電火災警報器・自動火災報知設備など |
避難設備 | 滑り台・避難はしご・誘導灯など |
消防活動用設備 | 排煙設備・連結散水設備など |
オフィス設備にパーテーションを利用する場合は、高さと設置場所に注意しましょう。天井に届くほど高いものは壁として扱われます。消防法では避難経路や避難階段までの距離も重視されるため、距離が遠くなる場合は指導が入ることもあります。
4.オフィスレイアウトと同時に家具についても考えよう
廊下や通路も含め、オフィスレイアウトを考えるときはオフィス家具とのバランスも重視しなければなりません。十分な幅を確保したつもりが、選んだデスクや棚の大きさによって予想以上に狭くなる可能性があるためです。
図面や数字のみを参考にレイアウトを考えると、レイアウトが失敗することにつながります。幅が問題ない場合でも、並べると不格好な配置となっていたり、オフィス内が狭く感じたりと視覚的な不快感を覚えることは珍しくありません。
理想のオフィスレイアウトをコーディネイトするためには、使用するアイテムを可能な限り自身の目で確かめた上で選ぶことが大切です。オフィス用品を販売するお店がショールームを展開している場合は、直接足を運ぶこともおすすめです。
最適な空間が作り出せるよう、レイアウトと家具の両方をしっかりと考えましょう。
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まとめ
今回は、オフィスの廊下や通路をデザインするときに遵守すべき、消防法や建築基準法の概要などを解説しました。
オフィス内装の設計時は、家具・照明の配置や色のバランスに加え、消防法および建築基準法の規定を遵守できているかどうかも注意しましょう。非常時に従業員の安全を確保するためにも、消防法や建築基準法で定められた数字は重要です。
明確な数字が定められていない部分も、スムーズな業務を実現するために余裕をもった配置やデザインが求められます。
オフィスのレイアウトを検討する際は、レイアウトだけでなく家具のバランスも考慮して、働きやすい環境を整えましょう。