オフィスの適正温度は?快適なオフィス環境を保つコツ
オフィスの管理業務を行っていると、「オフィス内が寒くて体調を崩してしまう」「オフィス内が暑く、仕事に集中できない」といった意見・不満を聞くこともあるでしょう。
オフィス内を適正な温度に保つことは、社員が快適に仕事をするために重要な要素の1つです。
この記事では、オフィス内を快適な温度にキープするコツについて解説します。オフィスの温度を適正に保つべき理由や、エアコン管理など、温度管理を適正化するポイントも併せて確認し、社員全員が快適に仕事に取り組むための対策を行いましょう。
1.法律の規定=オフィスに適正な温度ではない?
オフィスの適正室温・適正湿度は、「労働安全衛生法」に基づく「事務所衛生基準規則」によって定められており、事業者は適切な環境を維持する努力が義務付けられています。
■事業所衛生基準規則に規定された適正温度・湿度
- オフィスの適正温度…17℃以上・28℃以下(空調設備がある場合)
- オフィスの適正湿度…40%以上・70%以下
なお、オフィスの温度が10℃以下となっている場合、暖房などによって温度を調節する義務があります。違反した場合には、会社と代表者に「50万円以下の罰金」または「6か月以下の懲役」が科される恐れがあるため注意が必要です。
ただし、法律で定める適正範囲内に空調設備の温度を設定していれば部屋の中が快適になるとは限りません。外の気温・室内にいる社員の数・オフィスの環境によって調節する必要があることに留意しましょう。
2.オフィスに合わせた温度に保つべき2つの理由
オフィスを快適な環境に整えるためには、事務所衛生基準規則に定められた推奨温度(17℃以上・28℃以下)を目安として、各オフィスに合った温度を設定する必要があります。
ここでは、オフィスに合った温度に保つべき2つの理由を紹介します。
・体感温度には個人差がある
一般的に「筋肉量が多く代謝が活発な男性は暑がりであることが多い」「女性ややせ型の方は冷えを感じやすい」といったように、室内環境の感じ方は個人によって異なります。
男性が多い職場で高めの空調設定にすると暑くて集中力が低下したり、女性が多い職場で低めの温度設定にすると冷えて体調を崩したりといった事態になりかねません。
・空調が体調不良の原因になる
外の気温とオフィス内の温度が大幅に異なると、室内外の温度差によって風邪・感染症など、体調不良を引き起こす恐れがあります。特に真夏や真冬など、室内と室外の気温差が5℃以上となる場合には、めまい・頭痛・立ち眩みなどの症状が出ることもあるため、冷房対策や暖房対策に注意が必要です。
オフィス内を適正温度に保つためには、企業の男女構成や個人の体感温度の違いを踏まえて、それぞれのオフィスに合った温度設定を行うことが大切です。また、空調機器の設定温度は毎日一定の値にせず、その日の気温・気候によって調節しましょう。
3.オフィス内を快適な温度に維持する方法
オフィス内を快適な温度に保つためには、各従業員の体感温度の差を小さくすることがポイントです。それでは、オフィス内の温度を適正化するためには、どのような方法を行うと効果的なのでしょうか。
ここでは、オフィス内を適正温度に近づけるために実践できる工夫について紹介します。6つの方法を参考に、自社で取り組めるものを検討しましょう。
3-1.季節や時間帯により空調を調整する
快適と感じるオフィス内の温度は、外気温によっても異なります。1年中・1日中同じ温度設定とせず、季節・時間帯・気温などに合わせて空調の温度を調整しましょう。
例えば、夏季は朝や夕方には気温がやや低く、昼には気温が高くなるため、朝と夕方には冷房の温度を昼間よりも1~2℃ほど高くします。一方、冬季は朝夕に冷え込むため、昼間よりも設定温度を高くする必要があるでしょう。
このように、季節や時間帯によって温度を細かく設定することで、適正温度の実現が期待できます。
3-2.夏と冬でエアコンの風向きを変える
エアコンなどの空調設備を利用する場合は、機器から出る風の向きや人の位置にも注意が必要です。空調の風を直接受けると、体調不良の原因となる恐れがあります。
エアコンの風向きは、壁や天井に当たるように設定し、できる限り人に直接当たらないようにしましょう。冷たい空気は上から下へ、暖かい空気は下から上へ移動する性質があるため、夏(冷房)は上方向、冬(暖房)は下方向に風向きを設定すると効果的です。
3-3.夏場には扇風機を併用する
オフィスで空調設備を利用していても、「局所的にしか冷房が効いていない」ということはしばしば発生します。オフィスを適切な温度に保つためには、室内の温度をムラなく均一にすることが大切です。
特に冷房を利用する夏場には、扇風機やサーキュレーターなどのアイテムを導入し、オフィス内の空気を循環させましょう。空気が循環すると室内の温度が一定になるため、室内のどこにいても快適に仕事できるようになります。
3-4.冬場には加湿器を設置する
快適なオフィス環境を維持するためには、温度設定だけでなく湿度設定にも配慮する必要があります。特に冬場は、エアコンなどで室内の温度を高くすると、それに応じて室内の相対湿度が下がります。
事務所衛生基準規則に定められた湿度(40%以上・70%以下)を守るためにも、乾燥しやすい冬場には加湿器を設置し、室内の湿度を適切に保ちましょう。湿度が上昇すると体感温度も上がるという関係性があるため、加湿器を稼動させることで温度設定をやや低めにすることも可能です。
3-5.ドアや窓を開けて定期的に換気する
温度や湿度の値を一定の範囲内に維持するために、窓やドアを閉め切っているオフィスもあるのではないでしょうか。オフィスの快適な衛生的環境を実現するためには、温度や湿度などの要素だけでなく、空気環境も重要です。
室内の空気の質を良好に保ち、作業環境を改善するためには、定期的な換気がポイントとなります。窓やドアをたまに開けて、新鮮な空気を室内に取り入れるようにしましょう。窓やドアを開けることが難しい場合には、空気清浄機や換気システムの設置がおすすめです。
3-6.熱源の影響が少なくなるよう工夫する
オフィスの温度を検討する際に見落としやすいポイントとして、照明・パソコン・プリンター複合機などのオフィス機器・OA機器の数や使用状況が挙げられます。これらの機器は使用すると多量の熱が放出されるため、排熱対策が必要です。
熱源の影響を少なくするための方法には、「使用頻度が低いときにはパソコンやプリンターの電源をオフにする」「照明をLEDに替える」などの対策があります。また、太陽光による放射熱なども室温に影響を与えるため、ブラインドや遮熱フィルムなどの利用を検討しましょう。
4.オフィスの温度管理を適正化する2つのコツ
オフィスの温度管理を適切に行い、快適な環境を維持するためには、適温を保つ工夫を実践するとともに、管理環境を整えることも重要です。
・温度計・湿度計を設置する
空調機器の設定温度は、オフィスにおける実際の室温とは異なります。
実際の温度や湿度を適切に管理するためにも、室内の数か所に温度計(室温計)と湿度計を設置しましょう。定期的にチェックし、在室者にとって適切な温度・室温が維持できているかどうかを点検することが大切です。
・空調の管理者を配置する
全社員が空調機器の設定管理にアクセスできる状態の場合、個人が自分に合った温度に変更する恐れがあります。
空調機器を利用するオフィスでは、空調設備の管理者を決め、担当者以外は空調設備を操作できないようにすると、一定の環境を保ちやすくなります。管理者は体感温度や環境を細かくチェックし、温度設定を行いましょう。
上の2つのポイントを押さえた管理を行い、社員が活き活きと働けるオフィスづくりに取り組みましょう。
まとめ
オフィスの適正温度や適正湿度は法律によって定められています。一方で「規定の範囲内であれば何℃・何%でも快適である」というわけではなく、各オフィスに合った温度管理・湿度管理を行うことが大切です。
また、空調が直接当たると体調不良や生産性・作業効率の低下を招くことがあるため、注意しましょう。
オフィス内を快適性の高い温度にキープする方法には、「季節や時間帯で空調の設定を変える」「季節で空調の風向きを変える」などが挙げられます。温度計・湿度計の設置や空調環境の管理者の配置など、温度管理の環境整備・ルールづくりを実施し、快適なオフィスを実現しましょう。