部下からの逆パワハラに定義はある?逆パワハラの定義や見分け方とは
上司による部下へのパワハラをはじめ、現在ではアルハラやスメハラなどさまざまなハラスメントが存在します。その中でも、近年周知が進みつつあるハラスメントが「部下からの逆パワハラ」です。
この記事では、部下からの逆パワハラに関する定義や事例、逆パワハラが起きてしまう原因についてご紹介します。
1.部下からの逆パワハラとは
部下からの逆パワハラとは、文字通り部下から上司に対するパワーハラスメントです。「上司に従わない部下」「隠れて裏で上司への誹謗中傷」「上司に対する暴言・暴力」などといった行為が部下からの逆パワハラに定義されます。
1-1.そもそもパワハラの定義とは?
「部下から逆パワハラを受けた」かどうかを判断するには、パワハラの定義をチェックする必要があります。パワーハラスメントの定義は以下のとおりです。
- 職場の優位性や地位を利用している
- 業務内容の適正を超えた行動を取っている
- 職場環境を悪くしたり、相手に精神的・肉体的苦痛を与えている
“職場の優位性”という点を見ると逆パワハラは定義から外れているようにも思えますが、近年では部下という立場にも優位性があるとされています。そのため、「部下から上司に対する逆パワハラ」も立派なハラスメント行為として問題視されています。
2.逆パワハラに定義される事例
逆パワハラの定義に沿って、実際に起こりうる逆パワハラの事例を見ていきましょう。
2-1.上司に対して暴言・暴力を浴びせる部下
上下・部下という縛り関係なく、「暴言・暴力」はれっきとしたパワーハラスメントです。そのため、部下から上司に対する逆パワハラにも定義されています。「人前で無能な上司呼ばわりをする」「頭をはたく」といった行為は逆パワハラの事例に該当するため要注意です。
2-2.裏で誹謗中傷を行う
TwitterやFacebookのようなSNSで、個人を特定できるような上司に対する誹謗中傷は立派な逆パワハラに該当します。気づかないうちに誹謗中傷されていることも多く、逆パワハラの中では特に発見されにくいケースです。
2-3.何事もハラスメントだと訴える
いわば、「冤罪での嫌がらせ」が逆パワハラの定義に該当します。たとえば、上司からパワハラされていると吹聴したり、上司からの誘いをパワハラだと訴えたり。いわゆる”飲みニケーション”を拒む部下も増えつつあります。
もちろん、飲み会などに強制的に参加させることはあまり好ましいことではありません。しかし、何事もハラスメントだと訴える部下により、上司が頭を悩ませるといったことも逆パワハラの定義に触れます。
2-4.年齢差で上司を軽視する
正規の若い社員と高齢の非正規社員など、自身よりも年齢の低い上司を軽視することも逆パワハラの定義に該当します。過去の経験則などにより「上司なのにこんなこともできないのか?」など、上司を軽視する発言も立派な逆パワハラです。
3.パワハラが起きる職場の特徴
逆パワハラの定義を把握したら、次はパワハラが起きてしまう原因を把握することが大切です。平成28年に厚生労働省委託のもと調査された「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」によると、パワハラが起きる職場の特徴は以下のとおりです。
部下と上司のコミュニケーションが少ない職場(45.8%)
失敗が許されない職場(22.0%)
休みが取りづらい/残業が多い職場(21.0%)
さまざまな雇用形態が入り混じる職場(19.5%)
従業員数が少ない職場(13.1%)
さまざまな年代の従業員がいる職場(11.9%)
パワハラが起きる職場環境の中でも、「部下と上司のコミュニケーションが少ない環境」の割合が特に高くなっています。失敗が許されない環境や休みが取りづらいなど、ストレスが溜まりやすい・発散しづらい環境がパワハラを助長しているようです。
4.逆パワハラが起きてしまう原因
普通のハラスメントに比べると逆パワハラの原因は特殊なケースです。そのため、普通のパワハラに比べると逆パワハラの定義に該当するハラスメントは割合が低い傾向にあります。
とはいえ、逆パワハラの問題を軽視してはいけません。そもそもなぜ逆パワハラが起きてしまうのか、代表的な原因を見ていきましょう。
4-1.部下に対する上司のマネジメント能力不足
ハラスメントが問題視される中、「部下に対するコミュニケーション・ハラスメント研修」を受ける管理職の方もいるでしょう。また、雇用環境など、部下を含めた従業員に対してさまざまな配慮が求められるシーンも増えつつあります。
そのため、部下の態度に問題があっても、上司の忠告自体がパワハラにならないか気にして逆パワハラが黙認されてしまうといったケースも。上司や管理職が部下の逆パワハラを指摘しづらい雰囲気ができることも、より逆パワハラが増長してしまう原因となっています。
4-2.上司と部下のスキルがマッチしていない
近年では目覚ましい技術の進歩により、新しい技術が次々と登場しています。そのため、従来の知識が活かせないシーンも珍しくありません。特にIT業界では移り変わりが激しいため、若い部下の方が最新知識に詳しいケースもあります。
「自身の方が知識や経験に長けている」と部下が感じることで、上司に対する逆パワハラの原因となってしまうのです。ITに疎い高年齢層に対して行われる逆パワハラの定義として、「テクニカルハラスメント(テクハラ)」とも呼ばれています。
4-3.従業員が逆パワハラを認識していない
管理職に対するハラスメント研修が行われる中、一般従業員に対してはハラスメント問題に軽く触れるだけ、といった企業もあります。パワハラ問題は認知が進んでいるものの、部下から上司への逆パワハラについて定義を把握していない方がいるのも事実です。
「上司を軽んじる行為も逆パワハラになる」など、従業員へ逆パワハラの定義について周知する必要があります。
5.逆パワハラの予防策はどうする?
逆パワハラの定義に該当するハラスメントがあれば、適切に対処する必要があります。とはいえ、パワーハラスメント問題は未然に防ぐことがベストでしょう。逆パワハラの代表的な予防策は以下のとおりです。
- 一般従業員を含めたパワハラ研修をする
- 社内に専用の相談窓口を設ける
- 就業規則にパワハラ定義を盛り込む
パワハラ研修は特に効果があるとされており、「社内へ専用の相談窓口を設ける」ことも逆パワハラの予防策になると言われています。中でも、就業規則や社内報でパワハラの定義について告知・予防を呼びかけることは、2019年に改正されたパワハラ防止法にも繋がります。
5-1.パワハラ防止法とは
2019年に「改正労働施策総合推進法」というものが分布されました。その内容は職場でのパワーハラスメント対策を企業に義務付けるというもの。2020年6月に大企業に対してパワハラ防止法が施行され、2022年には中小企業にも適応される予定です。
そんなパワハラ防止法にはいくつかのパワハラ対策が事業主に義務付けられています。
- 労働者に対しパワハラ問題を啓発、方針を明確化する
- 何らかの問題を相談できる体制を整備する
- 職場のパワハラについて相談された際、速やかな事実確認と適正な対処を行う
パワハラ被害が確認されたら、被害者には休暇を促したり、加害者の配属先を変更したりする措置が必要です。6月に施行された時点では罰則が設けられていないものの、問題があれば厚生労働省から是正勧告や指導が行われることもあります。なお、パワハラを申告した従業員を解雇することは不当解雇にあたり、法律違反になりますのでご注意下さい。
近年ではSNSも発達しています。パワハラ対策がずさんなままでは、従業員からのリークで企業の名声が地に落ちてしまうかもしれません。逆パワハラをはじめとしてさまざまなパワハラの定義を明確化し、パワハラ防止法に取り組むことは、企業として必要不可欠なパワハラ対策だと言えるでしょう。
まとめ
上下関係がはっきりしている中で、「部下から逆パワハラを受けていると相談するなんて恥ずかしい」と感じてしまうかもしれません。中には、「マネジメント能力を疑われてしまうのでは…」と不安になってしまう方も居ます。
ですが、逆パワハラは立派なハラスメント行為です。逆パワハラの定義に当てはまるようなハラスメントを受けているのであれば、できる限り証拠を揃えて、第三者や専門機関への相談など適切な対処を心がけましょう。