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サテライトオフィスとは? 種類とメリット・デメリットを解説

オフィスに出社せずに働くリモートワークの種類は、自宅で仕事をする、近くのカフェに行く、個室や集中できるスペースを借りるなどいろいろあります。自宅に自分専用の部屋がありWi-Fi環境が整っていれば、家で仕事をするのもいいですが、「家族も出入りするリビングしか仕事できる場所がない」「夕方になると子どもが帰ってきてオンラインミーティングできる場所や時間が限られてしまう」など、問題点がある家庭も多いでしょう。

またシェアオフィスやコワーキングスペース、漫画喫茶など個室のスペースを借りて仕事をするのもいいですが、毎日となるとコストがかかり過ぎてしまいます。最近はサテライトオフィスを設置する企業が増えてきています。

1.サテライトオフィスとは

1.サテライトオフィスとは

サテライトオフィスとは、企業の本社や本拠地とは別に離れた場所に設置されているオフィスをいいます。メインの本社からサテライト(衛星)のように各地に設置される配置から、サテライトオフィスと名前がついています。

サテライトオフィスは一見事業所や支店と同じようですが、社員が通いやすい、働きやすい場所に設置されている点がポイントです。サテライトオフィスの規模は小さく、数人が働ける程度のスペースのものが多いですが、社員が仕事しやすいように通信やオフィス環境が整っています。

2.なぜサテライトオフィスが注目されているのか

2.なぜサテライトオフィスが注目されているのか

日本でサテライトオフィスが最初に導入されたのは、1988年頃といわれています。しかしサテライトオフィスの認知度が高まり、実際に設置され始めたのは最近です。これは、新型コロナウイルスにより、多くの企業がリモートワークを余儀なくされたことと関係があります。社員の安全を守り、業務を停滞させないためには、リモートワークは必須です。

また働き方改革により、従来のオフィスに出勤して働くスタイル以外の自由な働き方が一般的になってきた背景も、サテライトオフィスを広める後押しになっています。さらに企業にとっては、都心部に大きなオフィスを構えるよりサテライトオフィスに切り替えた方がコストを抑えられることも、サテライトオフィスの導入が進んでいる理由のひとつでしょう。

3.サテライトオフィスの種類

3.サテライトオフィスの種類

サテライトオフィスは、設置される場所によって大きく3つのタイプに分かれます。企業の業種や規模、事業の内容などによって適したサテライトオフィスは異なります。それぞれのサテライトオフィスの特徴と自社の目的や拠点の場所などを考えて、最適な場所にサテライトオフィスを設置しましょう。

3-1.都市型サテライトオフィス

都市型サテライトオフィスは、都市部に設置するタイプです。企業の拠点が都市部にあり、本社が都市部にある場合でも地方にある場合でも、都市部にサテライトオフィスを設置します。同じ都市部でも本社とは別にオフィスがあれば、営業先からもっとも近いオフィスに帰社して仕事ができます。また、自宅から本社よりも近いオフィスに出社して働くこともできます。

地方企業の都市部にあるサテライトオフィスの場合なら、生活の拠点は都市部に置きながら地方の企業で働くことも可能になります。

3-2.地方型サテライトオフィス

都市部に本社がある企業が地方にサテライトオフィスを設置するパターンです。サテライトオフィスを置いた地域での業務拡大を狙えるとともに、その地にいる優秀な人材の確保もできます。地方型サテライトオフィスは、その土地の雇用促進や活性化を図るため、地方の自治体が積極的に誘致を行う場合や、国や厚生労働省などが支援する場合もあります。

都市部で働いていた社員が、地方へ移住して継続して働くこともできるので、働き方改革の推進、さらに生産性の向上にもつながります。

3-3.郊外型サテライトオフィス

郊外型サテライトオフィスは、都市部に拠点を持つ企業が、郊外にオフィスを構えるタイプです。たとえば東京都内に本社がある企業が埼玉、千葉、神奈川などのベッドタウンにサテライトオフィスを設ければ、社員は都内まで通勤する必要がなくなり、毎日の通勤時間を減らせます。また企業にとっても交通費削減になります。

通勤時間が短くなれば、1日の拘束される時間が減りワークバランスも整い、家事や育児、介護などプライベートの時間も確保できるようになります。郊外型サテライトオフィスは、子育てと仕事、または介護と仕事の両立が難しく退職する社員の離職防止にもつながります。

4.サテライトオフィス導入のメリット

4.サテライトオフィス導入のメリット

サテライトオフィスは、企業だけでなく社員にとってもさまざまなメリットがあります。サテライトオフィスを導入するメリットを紹介していきましょう。

4-1.多様な働き方による優秀な人材の確保

サテライトオフィスを設置すれば、社員にとってより働きやすい環境が整います。職住が接近していれば家庭の事情と仕事を両立しやすくなるので、育児や介護など私生活の都合によってやむなく離職する人を減らす効果が期待できます。また、それらの問題を抱えている優秀な人材へアプローチもしやすくなります。

地方型のサテライトオフィスを設置すれば、都市部で働けない地方にいるハイスペックな人材が確保できます。多様な働き方を提案できる企業なら、個人が持つさまざまな事情を許容してその人に合った働き方で無理なく仕事をしてもらえるので、人手不足を解消し企業の戦力を上げられます。

4-2.移動や通勤時間の削減による生産性向上

本社よりも近い場所にサテライトオフィスがあれば、通勤時間や社員が営業先や外出先から帰社するまでの移動時間を減らせます。たとえば、今まで東京都心部の本社まで1時間以上かけて通勤していた社員が、郊外型のサテライトオフィスへ出勤するようになり片道の通勤時間が30分になれば、1日に1時間以上のゆとりが生まれます。外回りの営業の仕事なら、出先から近いオフィスにすぐに帰社して残務を行えるので、残業時間の削減になります。

業務以外の拘束時間を減らせるので、社員の疲労やストレスを軽減でき、生産性の向上が期待できます。

4-3.固定費や交通費などのコスト削減

サテライトオフィスを設置すれば、本社の規模を縮小できます。社員全員が本拠点に出社する場合、全員の席が必要です。しかし、サテライトオフィスに分散すれば、本社には広いスペースや人数分のデスクなどは不要になります。サテライトオフィスを増やして、本社を移転して規模を縮小する企業もあります。郊外型や地方型のサテライトオフィスなら、都市部の賃料よりもはるかに安く借りられるので、コスト削減ができます。

また、社員も本社まで時間をかけて通勤せず近いオフィスに出社するようになれば、企業が支払う交通費も抑えられます。

4-4.BCP(事業継続計画)への対策

BCP(事業継続計画)とは、火災や自然災害、テロなどのさまざまな緊急事態に企業が直面したときでも事業を進められるようにしたり、早期に復旧させたりするための計画をいいます。

近年は、東日本大震災を始めとした震災のほか、豪雨や台風などによる被害も頻繁に起きています。万が一の事態を想定して、企業が対策を取る必要があります。本社一括でデータを管理している場合、バックアップを取っていても、火災や地震などが起きると企業内の重要なデータや機密事項などは失われてしまいます。さらに復旧までの時間に膨大な時間がかかるでしょう。

サテライトオフィスを設置しておけばデータを分散して保管できるので、有事のときのリスクを減らせるだけでなく、緊急事態でも事業を続けられます。

5.サテライトオフィス導入のデメリット

5.サテライトオフィス導入のデメリット

サテライトオフィスは、メリットばかりのように見えますがデメリットもあります。導入する前に、デメリットも知っておくことで失敗を減らせます。サテライトオフィスのデメリットについても見ていきましょう。

5-1.コミュニケーションの質が下がる

本社と離れたサテライトオフィスで業務を行う場合、コミュニケーションが取りづらくなるデメリットがあります。打ち合わせや会議、業務の連絡などは電話やメール、チャットなどのツールを利用して行うようになるので、対面での会話が激減します。相手の言葉の微妙なニュアンスや雰囲気などが伝わりにくいため、情報伝達がうまくいかず、誤解を生むような場面が増える可能性もあるかも知れません。

また研修やセミナーなどもオンラインになったり、従来通りに受けられなかったりすることもあるでしょう。サテライトオフィスを設置する場合、オンラインミーティングのためのツールやビジネス用のチャットツールなど便利なものを導入して活用し、コミュニケーション不足を解消する必要があります。

5-2.社員管理や従来の人事評価が難しくなる

社員がサテライトオフィスで勤務するようになると、上司が部下を管理するのが難しくなります。また、上司からの業務指示や部下の管理などもオンラインが主流となります。出社する姿を実際に見るわけではないので、正しい勤怠管理ができなくなったり、業務内容の詳細なチェックができにくくなり人事評価が難しくなったりします。さらに本社とサテライトオフィスで人事評価に差が出てしまう可能性もあります。

サテライトオフィスを導入するときは、社員の自己管理を徹底させて、オンラインによる研修やセミナーなどの質や数を減らさないようにする必要があります。また本社とサテライトオフィスで人事の評価基準を見直す必要もあるかもしれません。

5-3.セキュリティリスクが高まる

サテライトオフィスでは、セキュリティ面でのリスクが高まります。自社だけでなく他の企業とオフィスをシェアする場合や、社員がそれぞれノートPCを持って仕事する場合などは、より高いセキュリティ対策が必要になります。共有スペースやそれぞれのパソコンに保管している社内情報や機密文書の取り扱いについては社員に徹底して教育し、必要であれば新たなセキュリティシステムの導入なども検討しましょう。

まとめ

働き方改革の推進もあり、今後もリモートワークは普及していくことでしょう。自宅ではなく、働く設備や環境が整ったサテライトオフィスが近くにあれば、社員のワークバランスも整いストレスや疲労を減らして業務に取り組めます。また、企業にとってもサテライトオフィスの設置は、経費削減や人材確保、BCP対策などさまざまなメリットがあります。

どのタイプのサテライトオフィスが自社に適しているのか、考えられるデメリットも含めて検討してみてください。

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