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ワーケーションとは?注目の理由・メリット&デメリット・今後の課題

多様な働き方の導入について検討する際、ワーケーションという言葉を知り、意味が気になった人も多いでしょう。ワーケーションには、企業側と社員側の双方にメリット・デメリットがあるため、導入時には正しい理解が必要です。

この記事では、ワーケーションの概要や注目され始めた理由、メリット&デメリット、導入に向けた課題について解説します。ワーケーションについて詳しく知り、より働きやすい環境を作りたい企業経営者や労務担当者は、ぜひ参考にしてください。

1.ワーケーションとは?

ワーケーションとは?

ワーケーションとは、仕事を表す「ワーク」と休暇を表す「バケーション」を組み合わせて作られた言葉です。オフィスではなく、リゾート地や温泉地の宿泊施設などで仕事を行う働き方がワーケーションと呼ばれます。ノートパソコンで仕事を進められる職種であれば、ワーケーションを取り入れることが可能です。

ワーケーションは、オフィス以外の場所で働く点ではテレワークと似ていますが、意味は異なります。テレワークは自宅やコワーキングスペースなど、オフィスから離れた仕事環境で働くことを表す言葉です。

一方、ワーケーションは遠隔地で休暇を取りながら働くことで、あくまでも休暇がメインとなります。そのため、遠隔地であっても仕事を行っている時間のほうが長い働き方は、ワーケーションとはみなされません。

1-1.ワーケーションが注目され始めた背景

ワーケーションは、2000年代にアメリカで考え出された働き方です。アメリカでは有給取得率が低かったことや、休暇中にも遠隔地で仕事を行う必要が多かったことなどが要因となり、ワーケーションが広まりました。

日本においても、数年前から地方自治体や民間企業がワーケーションを推進する取り組みを始めています。和歌山県では、2017年度からワーケーションのための環境整備が開始されました。また、長野県や北海道などの観光地でも、ワーケーションの誘致施策が行われています。

さらに、2020年3月ごろより本格的に問題となった新型コロナウイルス感染症の拡大も、ワーケーションに注目が集まった要因の一つです。

2.【企業・社員別】ワーケーションのメリット

【企業・社員別】ワーケーションのメリット

ワーケーションを導入すると、企業側と社員側の双方にメリットがあります。

企業側にとっては、社員の生産性や満足度の向上のほか、採用の面でも有利となることが主なメリットです。社員側にとっては、自分にあった新しいスタイルで楽しみながら働けることがメリットとなります。

ワーケーションで企業と社員が得られるメリットの詳細は、次の通りです。

2-1.企業側のメリット(1)社員の生産性・満足度向上につながる

ワーケーションの導入は、社員の生産性向上や満足度の向上につながります。

ワーケーションでは休暇中の限られた時間を利用して仕事を行うため、短時間に集中して業務を進めることが可能です。また、ワーケーションを導入することで、社員同士の連絡が滞らず、チームや組織全体の生産性が高まります。

業務量の多い職場では、社員が思い通りに休暇を取れていない状況が一般的です。ワーケーションを導入することで、日常から離れる機会が得られるため、社員の満足度が向上します。

2-2.企業側のメリット(2)社員の離職率低下・採用力の強化につながる

ワーケーションは、離職の防止や採用力の強化にも有用です。

多様な働き方が広まってきた近年では、より自由度が高い職場に魅力を感じ、転職を希望する社員が存在します。ワーケーションを導入することで、休暇で好きな場所に行きながら仕事を行えるため、自由に働きたい社員の離職を防ぐことが可能です。

また、ワーケーションを取り入れている企業は、働きやすい環境作りに注力していることを求職者に向けてアピールできます。

2-3.社員側のメリット(1)長期休暇の取得なしで旅行が楽しめる

ワーケーションを利用することで、長期休暇を取得しなくても旅行を楽しめます。

忙しい職場では、1週間以上などのまとまった休暇を取ることが難しい傾向にあります。しかし、ワーケーションによって滞在先の客室などでも仕事を行うことができれば、必要最低限の業務量をこなしながら休暇を楽しむことができます。

また、長期休暇を取得する場合と比較して、ワーケーションであれば休み明けに業務が溜まったり、休暇中に仕事が気になったりする心配がありません。仕事のペースを保ちながら旅行を楽しめることが、ワーケーションのメリットです。

2-4.社員側のメリット(2)常に新鮮な気持ちで仕事ができる

ワーケーションを利用して遠隔地に移動することで、常に新鮮な気持ちで仕事が行えます。

初めて行く場所や、好きなリゾート地では日常から離れてリフレッシュすることが可能です。そのため、社内では思い浮かばないアイデアがひらめいたり、日常業務を客観的に見直したりできます。

また、ワーケーションによって生活のリズムに変化が加わることも、気分転換やストレス解消につながります。

3.【企業・社員別】ワーケーションのデメリット

【企業・社員別】ワーケーションのデメリット

ワーケーションの導入にはメリットだけではなく、デメリットも少なからず存在します。

企業側にとっては、ワーケーションを導入するために、さまざまな準備が必要となることがデメリットです。また、社員側にとっては仕事と休暇が区別しにくくなることがデメリットとなります。

ワーケーションによって発生する企業と社員のデメリットの詳細は、次の通りです。

3-1.企業側のデメリット(1)勤務環境をきちんと整備しなければならない

ワーケーションによる企業側のデメリットとしては、ワーケーションができる勤務環境を整備しなければならないことがあげられます。

ワーケーションでは、旅行先までの移動費や宿泊費が発生するため、コストを誰が負担するかを事前に決めておくことが重要です。企業側がワーケーションにかかった宿泊費や移動費の一部を支払うなどの対応が、必要となります。

また、遠隔地でデータをやり取りする際のセキュリティ対策や、業務用のノートパソコン・スマートフォンを紛失した場合の対策も必須です。

さらに、社員が不満を抱かないような勤務環境の整備や、ワーケーションを行う社員の人事評価についても考える必要があります。

3-2.社員側のデメリット(2)仕事と休暇の線引きが難しくなりやすい

ワーケーションは休暇中の時間に仕事を行う働き方であるため、仕事と休暇の線引きが難しくなりやすい傾向です。休暇を取っても完全にリフレッシュできないことが、ワーケーションのデメリットとなります。

また、休暇中に仕事の電話がかかってきた場合、労働時間としてカウントされるか曖昧な点も、社員にとってのデメリットです。ワーケーションの業務負担が大きいと感じると、結局は有給休暇を取得したほうが良いと考え、ワーケーションを利用する社員が減る可能性があります。

4.ワーケーションの導入に向けた今後の課題

ワーケーションを導入する場合は、メリットだけではなく、デメリットや課題を正しく把握し、課題への対処方法を制度導入前に決定しておく必要があります。ワーケーションの導入に向けて解決するべき代表的な課題は、次の通りです。

コストに関する課題 ワーケーションによって発生するコストの負担割合や、宿泊費・移動費の上限金額などを設定する必要があります。
労務管理・人事評価に関する課題 ワーケーションによって遠隔地で仕事を行っている際の勤怠管理方法や、仕事量の割り当て、仕事の成果を評価する仕組みについて決める必要があります。
機器や設備に関する課題 移動先に備え付けのネットワーク環境が無い場合の対処方法や、業務用ノートパソコンの準備方法について決める必要があります。
制度の周知に関する課題 ワーケーション制度について社員に周知し、内容を正しく理解してもらう必要があります。

ワーケーションを導入する際は、これらの課題について社内で十分に検討しましょう。

まとめ

ワーケーションとは、旅行先の宿泊施設などを利用して仕事を行う新しい働き方です。ワーケーションは2000年代アメリカで誕生し、近年は日本の企業でも取り入れられています。

ワーケーションのメリットは、生産性の向上や離職率の低下、長期休暇を取得せずに旅行が楽しめることなどです。一方、勤務環境の整備が必要なことや、仕事と休暇の線引きが難しくなりやすいことが、ワーケーションのデメリットとなっています。

労務管理や人事評価に関する課題への対処法を考えてから、ワーケーションを導入するべきか否かを判断しましょう。

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